時間薬
旦那さんが残した引き出し…何段かの透明なプラスチックの引き出しを、
久し振りでまじまじと見てしまいました。
透明で透けて見えるから
何が入っているか、ぼんやり見えます。
旦那さんの宝の箱。
愛用のデジタルカメラが無造作に入っているし、
亡くなる直前に、調子が悪くてあちこち通った病院のレシートもたくさん入っています。
友達と撮った写真や
趣味で行っていた会合の書類とか、
その他いろいろ。
引き出しには、旦那さんにとって意味のある、大事なものがたくさん入っています。
だけどあの日を境に、引き出しの中の宝物は、
持ち主のいない、誰からも求められない、捨てられるのを待つだけの、ただのモノになってしまいました。
あの日を境に。
私の心境も、環境も、未来も、あの日を境に激変しました。
その変化が大きすぎて、現実を直視することが出来ずにいます。
直視したら、太陽の光みたいに強すぎて、私の心が焼かれてしまいそうだから。
現実をなるべく見ないように、触れないように、恐る恐る生きています。
今日一日を慎重に用心深く生きています。
時間薬だけが頼みです。