時間
痛みを伴わずにだんだん普通になってゆくんだなぁ、と、ある意味、実感です。
実は少し前に、職場に、うちにあった傘を一本贈呈(?)したのです。
私たち職員は、いつも通用口から社屋に入るのですが、
表口から外に出る用事がある時、雨の日に傘がないと困るんですよね。
だから家にあった使ってない傘のうちの一本を、
「皆さんもどうぞ使ってくださいネ~」と、
職場の表口に置くことにしたのです。
家には、私が買った覚えのない男傘が3本もあって、
間違いなく旦那さんのものではあるのだけど、
彼が使ったのを見たことのないチェック柄の傘を贈呈しました。
チェック柄? と、贈呈する前に気づくべきでした。
大人の男性が使うにはちょっと勇気が必要と思われる傘です。
職場に持っていって、実際に雨の日に初めて使ってみて、
やっと気が付きました。
傘には小さく名前が書いてあったのです、しかも、ひらがなで。
要するに、旦那さんの一人息子の傘でした。
つまり、前の奥さんとの一人息子。
文字で書くと、なんか、おどろおどろしくなっちゃいますけど、
私もその息子さんに会ったことがありますし、彼はもう普通に社会人です。
おそらく小学生か中学生の時に使っていた傘なんだと思います。
そして、それをお父さんが持って来ていたらしいのです。
皆さんもどうぞ使って…と贈呈した傘に、マジックペンで名前が書いてあるのはどうにも恥ずかしいので、
ささっと、上から黒く塗りつぶしました。
言い方を変えれば、遺品に手を加えたわけですが、
(旦那さんの名前が書いてあるわけではないけど)、ちょっと前だったら、かなり抵抗があったか、できなかったと思います。
だって仮にも、旦那さんが大事にしていた傘なわけで。
だけど今日は、
名前に気が付いて、アッと思って、すぐサササッと消しちゃった。
迷いも何もなかったです。
油性ペンのキャップを外しながら、
軽い罪悪感と、
自分の判断に驚きながら、
「時間が経ったんだなぁ」としみじみ感じた今日でした。