他虐(造語)(3)
「えー。出来るんじゃん。」と私が言って、
彼がニヤリとして。
ちゃんと松葉杖を持てたことが嬉しかったのか、
リハ室に行くために乗ったエレベーターの中で、
ちょっと得意そうに「オレのこと、ヘンなヤツだと思ったでしょ。」と言うから、
私、「うん、思ったよ。『あ~ケッペキだ、ケッペキ。』って。
だけど大したことないじゃん、グリップとかちゃんと持てるんだから」。
するとリフジン様は、隣にいた女性の先生に向かって、
「でもオレ、みんなに潔癖症って思われてるよね?」。
その先生はちょっと困った顔をして、「うん。」と小さな声で言いました。
そして彼は、エレベーターを降りた後に言ったのです。
「オレ、誰かに触るのイヤだっていう気持ちもあるけど、
誰かのものを触ってしまうの、汚してしまって申し訳ない、という気持ちもあるんだよ。だから他人のものを持てないんだ」。
彼は私に対して言い訳をしたかったのかもしれません。
「オレ、よく居る病的なキレイズキとはちょっと違うんだぜ」。
だけどあなたは、それが意味する真意までには思い至らなかったに違いない。
「あぁ、そうなんだ~。」とあやふやな返事に留めたけれど、
私は大きなショックを受けました。
あなた、今言ったこと、どいうことだか分かっているの?
なんて悲しいことを言うの?
それがとういうことだか、分かっているの?
私は、心理学の詳しいことはわかりません。
でも、彼が相手の汚さを嫌うのは、おそらく心理的な「防衛」ですよね。
根本は、彼は自分の「汚さ」を呪っている。
(実際には汚くなんかないのに。
人一倍不潔を嫌がる彼なのに。)
誰かのものを触ってしまってごめんなさい…って、
要するに、「触る価値のない自分」、「相手より汚い自分」ってことでしょう?
それは即ち、恐ろしく自己評価が低い、ということです。
「こんな汚い価値のない自分が、生きててごめんなさい」の証しです。
そんな無意識の、自己の存在に対する疑念が言葉になって表れたのでしょう。
そしてつまりそれが、
極度に相手を支配したがるサディズムの裏返しだと、
あなたは気が付いているのでしょうか。