狂女の恋
この短期間に、ふたりの人に恋をしたことは書きました。
ふたりめは、つまり2つめの病院…回復期リハビリテーション病院に移ってからの恋だったんですが、
彼は作業療法士で、ひとりめの人と同じくリハビリの先生でした。
でも、とても若い。
34歳のボク、です。
思い出せば、回復期病院で最初に会ったとき彼のイケメンぶり(松坂桃李クン似)や、話題作りのうまさに少し驚いて、
「8つ下の想い人が居なければ、私、この人に惚れてるかもな。
だけど、まるっきり自分の子供世代だしなぁ。」なんて思った記憶がありました。
ひと月くらい、そのまんまの状態で、私の想いは8つ下のイケメンのほうに向いていましたが、
実はある日、事件が起こりました。
事件と言ったって、私の中だけの事件、だけどね。
34歳のボクが、…と言っても、たまにチラリと甘えるそぶりを見せるだけで、
(そこがメッチャ可愛いんだけど)、
「ボク」とか呼んでるけど、普通の青年です。…と、その日までは思ってたんだけど。
その日のリハビリの最中、彼はなんの前触れもなしに、いきなり、
サディズムの話をし始めたのです。
えええっっっ!と内心驚きながら、でも平静を装って彼の話を聞きました。
いや、そんなリアルな行為(?)の話じゃないんだけど、
でも、江戸時代には道具がないから竹を割いて使った…みたいな
非常にマニアックな話をしたのです。
なんでまたいきなり…という驚きとともに、
そんな内緒話(?)を私にしてくれたことがちょっと嬉しく、
でも最終的にはリアクションに困って、
私、大笑いしてしまったのね。「うわぁ~、変態じゃん」とか言いながら。
(私が「変態じゃん」と言ったら、
「変態? ふふふ。そう、変態だよ。」と含み笑いをしたカッコよい34歳イケメンに、
私はその時、なんだか足をすくわれてしまったのです。
(あ、でも私、マゾとかそういう性癖はないですよ。
そこらへん、いたってノーマルです笑笑。))
そして、その日の別れ際、彼は私に、
「さっきは大人の対応、ありがとう。」と、いつもの精悍な顔をして言った時、
「あぁ、きっと、この人のサディズムはホンモノだ」と思うとともに、
最終的にその一矢で、私は魂を射抜かれてしまったのでした。
でも流石に私には、歳の差だけは抗えない…と手放したところがあり、
私は最後まで、お姉さんが可愛い弟を愛でる(?)姿勢は変えませんでした。
好きだ、なんて絶対一言も言わなかった。
だけど雰囲気は彼に伝わってしまっていて、
彼は私のことを、ひとが居ない時には「おねえさん」と呼んだし、
電話番号渡した時に、「オレ、明日からもっと大人になったほうがいいのかな」なんて言ってみたり。(きゃあ恥ずかしい。)(「オレ、あんた色に染まりますよ」と私には聞こえました。)
それに、退院したら電話するだの、近くに来たら会うだの会わないだの、
そんな話にはなってたんですよ。入院していた時には。
だけど、ダメですね。会わなくなると。
結局、そろそろ1ヶ月になるけど、彼からの電話はありません。
私の年齢を考えて、彼も現実に引き戻されたんだと思います。
そして私も、あり得ない話に酔っ払うのに、そろそろ疲れてきました。
実は来週の火曜日、
東京から帰って来た次の日ですが、
義足の調整をするために、彼のいる病院に行くことになりました。
…というか、私が今日、思いついて、急に行くことにしたのです。
装具屋さんに電話をしようと思いついた時、
その背後には、イケメン君の姿がちらついていました。
彼に会う理由づけに、装具屋さんに行くことを利用する、と言ったら正しいのかな。
(装具屋さん、ごめんなさい!)
でも、イケメン君の休みは不定期なので、会えるか会えないかは当日までわかりません。
装具屋さんに電話をした後しばらくして、
「いったい私は何をやってるんだろう。」と、自分がわからなくなってしまいました。
「装具屋さんを騙してまで、34歳の男の子と…。あんたはいったい何が目的なの?」。
もちろん結婚など望む筈もないし、
お付き合いとか肉体関係とか、そういう事に向ける精神的なエネルギーって
年齢とともに少しずつ枯渇してきていて、
どちらかというと、似ているのは、
推しのアイドルの追っかけおばさん。だったりします。笑。
そして、彼もまた、私への気持ちはどうにしろ、
現実的に無茶なことを割り切って、
だから電話をかけてこないのだろうと、悩んだ挙句そう思うことに決めました。
なので、来週の火曜日の病院への訪問は、
この恋を終わらせて、自分の気持ちに整理をつけるため、と決めました。