リフジン様
入院していたころ、34歳イケメンくんとは、
バカな話をたくさんして、随分笑ったものでしたが、
お互いに、笑えるあだ名をつけたりもしました。
何かの話をしていて、私が彼に、「それは理不尽というものでしょ!」と言った時、
「だから、オレはリフジンという名の神なんだ。」と言ったのです。
それ以来、彼のあだ名は「リフジン様」になったし、
彼が私につけたあだ名は「イ・ソジン」になりました。
私ことイ・ソジンは、リフジン様の第一秘書です。
ちなみに「イ・ソジン」は韓国人の設定なので、発音もその感じ。
「リフジン様」については、リフジンは、リムジンと同じアクセントなのだそうです。
時々お互いにあだ名で呼び合っては、笑いの種にしたものでした。
昨日、会った時、
「なんで電話くれないの?」と私が聞いた時に、最初に彼が言った言葉を、今日になって思い出しました。
「俺はリフジンだから、理不尽なことしかしないんだよ。」と言ったのです。
その言葉を思い出したとき、なんだか少し救われた気がしました。
そうか。昨日、私が「あなたは、なんで電話くれないの?」と聞いた時に、
理不尽なことを私にしているという意識があったんだ。
私から電話番号を受け取って、
私に「非通知でよいから、電話が欲しい」と言われて、頷き、
「電話をかけるの、そんな未来の話でよいの?」と私に問い直した。
それなのに相手に電話をかけず、1ヶ月待たせた挙げ句「かける気はない」という。
でも、それが、相手に対して理不尽な行いだと、
あなたは自覚していたんだね。
ちなみに「理不尽」を電子辞書で調べたところ、以下のように書いてありました。
「理不尽」とは、筋道の通らないことや、人として行うべきではないやり方をすること、因果が矛盾していて納得できないことなどを意味する。また論理の「理」、無理の「理」から、論理的に考えれば間違っている行動、無理無体、といった意味もある。
「人として行うべきではないやり方をすること」だってさ。
なるほどね。
ふふ。「人として」だってさ。
あんた、私にどれだけひどいことしたか、ちゃんと言葉の意味わかってるの?
彼の言葉を思い出して、とりあえずほっとしたのは、
「理不尽だと気付いているなら、私に対して少なからず、良心が痛むところもあるんだろう」と思うからです。
それなら私も少しは仇を取ったような気になるというもの。
それに、(ここらへんが恋、悲しい理不尽。)、どんな形であっても、あの人の中に私が居続けられる、しばらくの間。
でも一方で、もうひとつ、別の意味でほっとしている私が居ます。
いくらストイックだの、冷血だのと言われても、
自分のやっていることが「理不尽なこと」だと気が付ける人だったんだということです。
例えば潔癖性とかサディストとかが、理には叶わない事なんだと。
でもしかし、自分の欲望を抑えられない?
それはある意味、弱い自我を防衛する手段でもあるわけだから。
「あぁ良かった。やっぱり彼は、私と同じ種類の人間だ」。
……、今さら、親しみ感じたってしょうがないじゃないのよ、と、ひとりの私は言うけれど、
もう一人の私は、まだ彼との未来をあきらめることができないでいます。