心が引き裂かれるような痛み
"彼の働く病院”に行ってきましたよ。
結果を報告しますね。
やはり私の想いは相手に通じませんでした。
つまり失恋。たぶん年齢差のせい。予想はしてましたけど。
今日は家を出る前から、
帰ってきたときに気持ちはかなりボロボロになってるんだろうなぁ、と、
ある程度予想を立ててたんですが。
わりとそこまで落ち込まずに済んでいます。
というのも、友人ふたりに長電話をして、今まで聞いてもらってたから。
だけどやっぱり心は傷ついてます。悲しいし、寂しい。
ただ不幸中の幸いというか、旦那さんが天国から助けてくれたというか、
彼は今日、出勤日だったのです。
だから直接、彼と話をし、本人の気持ちを確認することができました。
話は短い時間で終わってしまいましたけど。
でもある程度、結果は予想していたので、
実は、最後の見栄というか意地というか、
オシャレして行きました。
こんなカッコイイおねえさんを俺はフッてしまったのか…とちょっとは後悔してほしかったから。
オシャレと言っても下はジーンズはいて、
今の髪形に合わせてちょっとボーイッシュな感じにし、
だけど化粧は少し濃いめにしました。
リハの先生たちには化粧した顔は一度も見せたことなかったから、ここは大見得を切りました。つまりハッタリかましたわけですね。
装具屋さんが着くしばらく前に病院に入ったので、
挨拶を兼ねてリハビリ室に入ったところ、
(そんなに化けたか)、マスクのせいもあり、誰にも気づいてもらえませんでした。
名前を言って、初めて気づいてもらえたというか。
もちろん入院時は夏だったし上はTシャツ着て、スッピンだしメガネかけてたし。
でも髪を前よりショートにして、コンタクトに変えて、化粧ちょっと濃くしたくらいで
なにもそんなに驚かなくっても…なんてちょっと複雑な気分です。
ケアマネさんには「メイクで変わるね~~。」と、
およそ誉め言葉とは思えないような一言を頂戴しました。
でもまぁ、目的は半分果たせたようで、その意味ではよかったです。
彼とは少し普通に話しましたけど、その時は2人とも穏やかに話せました。
というか、からかったり、からかわれたり、まるで1ヶ月のブランクがどこかへ行ったような、なんだか懐かしい気がしました。
彼はやっぱりカッコよかったです。
1ヶ月の間に少し髪の毛が伸びて、多分少しパーマをかけたのか?
逆サンの細マッチョが、なんだか今日はいつもに増してたくましく見えました。
ちょっと少しの時間、2人で話せる場を作ってもらいました。
私が待っていると、
「お待たせ」と言いながら近づいてきて、「やっぱりその話か。」と言いました。
「なんで電話をくれないの?」
「俺は患者さんには自分から電話はしないんだ」。
「それならそう言ってよ。この1ヶ月間、電話待っててとても辛かったよ。」
「自分から電話はしないって、前にも言ったろ」。
「でもその後に、私、電話かけてって言ったじゃん。そしたら、わかった、って言ったよね」。
「そんなこと、言ってないよ。それに電話、仕事場になら幾らでも掛けてくれていいんだよ。オレ、出るから」。
でも、あなたは言ったよね。私、ちゃんと覚えてる。
「家の近くに来たときは電話して。」と頼んだら、「そんな未来の話でよいの?」って、あなたは言ったよね。
私はだから言ったんですよ、「じゃあ退院して何日かしたら掛けて」って。
その会話、あなたはどう捉えたのか。
私の気持ち、届けたつもりだったけど。
あぁ、あとは水掛け論だ。これ以上、話をしても、始まらない。
それに私、今日は大人の対応をしようと思って来たけど、ついついなじってしまったわ。
「わかった。
………。私、お陰様で、無事、以前と同じ程度に歩くことができるようになりました。今までどうもありがとうございました」。
「あとはもう来ないの?」。
「装具屋さんに用事があれば来るけど、でも、新しい義足が作れるのは、あと1年くらいかかるから、来るならその時だね。 あぁ、私もしかしたら、ほんとに仕事場に電話かけるかもしれないよ、ははは。」
「幾らでも掛けてきなよ」。
「お世話になりました。どうぞお元気でお過ごしください。」
「あぁ、お世話になりました」。
こんな感じで、短い時間で最後の幕引きとなりました。
気持ちがだいぶ引き摺られて、帰り道で、よっぽど職場に電話しようかとも思ったが、
職場に掛けて、何いうのよ。
「非通知でよいから、掛けて」とまで言ったのに、掛けてこなかったんですから
私に対する気持ちは、察しがつきます。
それなら、これで別れとしたほうがいい。もし仮に、二度三度、電話のやり取りをしたからと言って、どうにもなるもんじゃない。
家に帰ってきてから、友人ふたりと電話をしました。
ふたりとも、私の気持ちを黙って聞いてくれました。
やっぱり、こういう気持ちの憂さを晴らすのは、愚痴や嘆きに限ります。
話しているうちに涙が出てきたし、
それで、少しだけど気持ちが楽になるような気がしました。
あの人に、きっと、もう会うこともないでしょう。
もしかしたら、1年後に義足を作りに行くときに、また会うことはあるかもしれないけど、
その時には流石に少し笑って挨拶できるんだと思います。
だけどもう、話はしなくていいな。
今はまだ悲しくて寂しいし、
退院前日の握手、……あの暖かくて大きな手を思い浮かべてしまうけど、
たぶん1年後にもしまた会ったとしても、
あの人も私も、別になんてこと無くなってる。
軽く会釈して終わりかな。
そんな感じで、別に、いいです。
さようなら。