桜花
桜といえば思い出の花。
亡くなった年の春、コロナのために、
人っ子ひとりいない公園で、ふたりで眺めた最後の桜になりました。
あの浮世離れした淋しい光景は、私の記憶から一生消えないでしょう。
その悲しみの桜花を、今年はほとんど見ずにすんでいられるのは、恵なのかもしれません。
まず、職場が変わったせいで、
日々緊張の連続で、桜の花を見る心のゆとりがありません。
それに、通勤経路が全く変わってしまったせいで、
とりあえず、桜祭りの行われる駅前通りは、今のところ全く通らずにすんでいます。
前の職場には桜の木があったけど、
今の職場からは、見渡す限り一本も桜の木は無いし。
だから今年は、まだ一本も花咲く桜の木を見ていないのです。
桜は確かに奇麗だけどさ。
今の私には美しすぎて、あの薄曇りの公園を思い出して、心が凍ります。
だから、まだしばらく見たくないし、
思い出したくありません。