思い出のゆず湯
不思議な事ってあるものです。
皮肉なものだなぁとも思います。
旦那さんが生きていた頃、まさか彼の没後に、私の勤務先が彼の勤めていた会社のすぐ近くになるなんて。
生きていると、考えてもいないことが起こるものです。
旦那さんが元気だった頃から、
私の勤める会社で、拠点のひとつが、旦那さんの会社のすぐ近くにあることは知っていました。
だけど、私たちの住むアパートは、そこから隣の隣の市だし、
遠いし田舎だし、まっさか私がその田舎の拠点に飛ばされる(?)だろうなんて、
考えてもいなかったのです。
異動になったのは、今年の春だから、
旦那さんが亡くなってから、2年弱経った頃です。
最初の頃は本当に驚いたし、
毎日毎日、通勤途中の風景を見て、寂しく懐かしい不思議な気持ちになっていました。
あの人が毎朝見ていた景色だ。
あの人が良く利用していたガソリンスタンドだ。
まだ2人が一緒に住む前、しばらくこのビジネスホテルに泊まって、アパート探しをしたんだって言ってたっけ。
そんなことを思い出しては、その度、少し胸が苦しくなりました。
でも今はもう、通勤途中の風景も、すっかり見慣れた風景になっています。
ですが、異動になってから結局まだ一度も、
彼を偲ぶために、以前彼が勤めていた会社を見に行くことはできないでいます。
私はまだまだ、自分の心がなるべく傷つかないように、
できるだけ目や耳から入る刺激を避けているので、
彼を思い出す場所に、自分から積極的に近づくことはしないでいるのです。
彼の会社のすぐ近くに、猫ちゃんが何匹も住んでいる広場があるんですけどね。
猫好きの私のために、旦那さんには何度か連れて行ってもらったものだけど、
もちろん、そこにも行けずにいます。
不思議で皮肉な事…と最初に書いたのは、
私が今、何年か前の旦那さんと同じ経験をしているからです。
前にも何度か書いたけど、田舎にある分、自然が豊かで、
農作物など、たびたび分けていただくのが常なのですが、
今は、ゆずの季節です。
旦那さんは今の季節、毎年必ずお客さんからゆずの実を戴いてきて、
うちでは毎年、冬至に限らずゆず風呂を楽しんだものでした。
私の職場からも、少し山側に入ると、
あちこちの家の庭に、ゆずの木が植えてあるんですよね。
そして今の季節、その木には黄色いゆずの実がたわわに実っています。
旦那さんも、集金のためにお客さんの家を回れば、
この季節、あちこちの家でゆずを持たせてくれたんだと思います。
そして、つまりは順番が私に回ってきたというか、
今日あたり、お客さんの家からもらってきたという、
奇麗に色づいた大きめのゆずの実を15個ぐらい?
職場でほとんど無理やり押し付けられて(笑)、帰ってきました。
「ゆず湯をしてもよいし、玄関に飾れば香りが楽しめるし、
ゆずジャムにしても良いわよぉ。」なんて言われて。
一つか二つ、形の良いのを玄関に飾って、
残りは、ゆずジャムを少し作ってみようかと思っています。
ゆず湯はちょっとまだ、避けたいな。
ゆず湯に入って、思い出して寂しくなるより、
ネットで作り方を検索して、
美味しいゆずジャム作って食べたいと思ってます。