予感
もしかしたら旦那さんはわかっていたのかもしれません。
自分の命がもうすぐ尽きるということを。
体調が悪いといっても背中の痛みが主だったのですけど、
そしてそれこそが梗塞の前兆だったわけなのですけれど、
当時の旦那さんと私はそれを知る由もなく、
だからこの幸せはずっとずっと続くものだと…、
少なくとも私は、そう思っていたのです。
だけど、旦那さんには何か予感めいたものがあったのではないか、と
今となってはそう思います。
というのも、亡くなる3週間か1ヶ月ほど前から、
夜、寝る前に必ず私に向かって
「大事だよ。大好きだよ。ありがとうね。」と
必ずそう言ってからちょっとお辞儀をして、それからベッドに入るようになりました。
それまでは、寝る前にそんなこと言ったこともないし、
しかも毎晩寝る前に必ず言うようになったから、
「なんだろ、急に。」と、少し妙だと思ってました。
当時私はちょっとした資格試験の勉強のために
毎晩彼より夜更かしをしていたので、
必ず私に挨拶をしてから寝る旦那さんの言葉を不思議な気持ちで聞き、
「はいはい、私もよ」なんてすげない返事をしていました。
自分の気持ちや、感謝の言葉を、
旦那さんがどういう気持ちで言ったのかはわかりませんし、
…そして予感めいたものが有ったのか、無かったのかは
今になったらもう知る術はありません。
ですが、とりあえず、彼がこの言葉を遺してくれたおかげで、
本当にどれだけ私は救われたかわかりません。
最後まで、ありがとう、と思ってくれていたんだ。
最後まで、大事だと思ってくれていたんだ。
最後まで大好きでいてくれたんだ。
ほんとうに、ほんとうに、それが彼の気持ちだったんだ、
私に感謝すらしてくれていたんだ…と思えた時、
私の彼に対する後悔は、最小限に小さなもので済むのです。