いつもとなりにいた人が…nekonezumiのブログ

2020年6月、いつもとなりにいた人が脳梗塞で虹の橋を渡りました。あっという間の出来事でした。

いつの間にか、あなたの知らない風景に。

職場に通う国道の道すがら、


前に住んでいたアパートのそばを通るのですが、


そのアパートから国道に出る坂道の脇に建っていた、


古い小さな、小屋のような家の、取り壊しが始まりました。




その家は、国道からすっかり見渡せる場所に建っているのですが、


私たちが前のアパートに住んでいた頃は、


いつもそのそばを通るので、


あるのが当然だったし、ほとんど気にしていませんでした。


だけど、いざ取り壊すとなって、


道路に、規模はとても小さいけれど交通規制がされていたり、


作業服着た兄ちゃんたちが何人かいたり、小さな重機が動いていたりして、


はぁ~、いよいよ取り壊されるのか、と気持ちが少ししんみりします。





私たちが前のアパートに住んでいた頃は、


その小さな家に、住んでる人がいたのです。


家自体は本当に粗末で、


窓にサッシも使ってない古い家で、


まるで昔の炭鉱長屋みたいな平屋の家でした。


でもその家には、老人のご夫婦が住んでいて、


洗濯物が干してあったり、庭には何かガラクタ的なものが置いてあったり、


いわゆる生活臭みたいなものが感じられていたのです。


そしてなんだか、素敵でお洒落な家よりも、妙に親近感を感じたりしてね。


なんとなく肩ひじ張らなくてよくて、ほっとするというか。





だけどあれから数年経って、


たぶん、住んでいた方が福祉施設に行ったか、入院したか、あるいは亡くなったか。


家を壊すのなんてあっという間だから、


数日経ったらもう、すっかり更地になってしまうのでしょう。




はかないなぁ、というか。


かつて、旦那さんも私も、毎日当然のように横の道を通っていたのに。


そして何故だかそういう時って、


その風景って永遠にあるものだと思ってしまうものですね。


ずっとずっと変わらずにそのままだって。


いつまでもあるものだって信じてしまっている。





そうやって、いろんなものが少しずつ変わっていくんですね。


そして気が付いたら、いつの間にか全然知らない風景になっている。


いつの間にか、あなたのいない風景に。


いつの間にか、あなたが知らない風景に。



無機質で、寂しい、悲しい風景です。

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