あなたにとって
あなたにとって、この家って何だったんでしょうか。
引っ越しを決めてから、あなたは一生懸命、新しい住まいを探し始めました。
私が、そろそろ住まいを変えたいなって言ったから。
足がちょっと悪い私が不自由しないように
駐車場から玄関が近くって、階段がなくって、
収納もたっぷりあるし、内装もそれなりにきれいで明るいし、
前のアパートに比べたら本当に住みやすい素敵な住まいを見つけてくれました。
何軒も何軒も、探してくれて、やっと見つけた今のアパート。
不動産屋さんに鍵を借りて、初めて入った瞬間に、
ふたり同時に「ここに決まりだね!」と叫んだほどです。
昨年のお盆に引っ越してきて、
あなたはしばらくの間、ことあるごとに
「いいアパート見つけたもんだよなぁ」と悦に浸っておりました。
私も、いまも、そう思ってます。
引っ越して、あっという間、9か月半であなたは逝ってしまいました。
季節を一回りしないうちに、逝ってしまいました。
まるで、引っ越したのは
ふたりで過ごした思い出がいっぱいの前のアパートに
私を閉じ込めないためだったみたいだね。
ふたりで過ごした時間が短いから、
このアパートで暮らしていくのは、私にとって、そのぶん楽です。
前のアパートは、泣いたり笑ったり、ケンカもしたし、
あなたと過ごした楽しい思い出がいっぱいで、
あのアパートに一人残されてたら、ほんとうに苦しかったと思います。
やっぱりあなた、
今でも私を助けてくれてるんだね。
大好きだよ、ありがとね。