ほんとうはね。
前にもお話ししましたけど、
私はあまり、ひとに正直にものを言うほうではありません。
…というか、警戒してるのね、いつも他人を。
相手を信用していないから、すぐ守りに入ってしまうのです。
だから前の職場でも、「あなたはヘンなウソをつく癖があるね。」と上司に言われたことがありました。
しかも、すぐ相手にバレるようなウソなんだってさ。
主に職場など、自分の立場や利益を守る必要のある時に、本当のことを言わないクセがあるらしいです。
実は今日もそのクセが出てしまいました。
うちの職場で、今度、台湾に行く人が居て、その話で盛り上がっていた時です。
何が美味しいとか、どこを見たらいいのかとか。Wi-Fiはどうするの、とか。
彼女はツアーで行くそうなので、そんなに自分で勝手には決められないんだけれど、でも一応、いろいろ調べてワクワクしたいじゃないですか!
私もその話の輪に加わっていました。
私、旦那さんと海外には何度か行ったことがあります。
旦那さんが旅行好きだったのね。
だから、国内とか海外とか、私を連れてあちこち旅行に行くことが、彼の趣味でした。
(あ。念のため。私は彼に養ってもらっているわけではないので、旅行代はいつも割り勘をしていました。)
だから台湾にも行ったことがあります。
九分は素敵だったし、火鍋は美味しかった。
今、当時の写真を見てみたけど、ふたりとも本当にいい顔して映っています。
普通だったら、それを会社の人や友人に言うの、なんでもない事だと思うの。
どちらかと言えば、自慢げに話しちゃうんじゃない?
だけど、私、言えないんです。
そういうことは隠すことだと、小さな時から教わって来た。
それに、もし言ったらヒンシュクを買うと思っちゃう。
「事務員ごときが(!)。俺なんて日本から一歩も出たことないんだぞ!」。
そんなこと、誰も思わないってば。
だけど、それを信じられない。
そして、私のその気持ちの裏側には、とても高慢かつ傲慢な思いがあることもわかっています。 「ほんとうはね」。「実は、私はね」。
だから余計に隠す。
それもまた、自分でわかっています。
職員たちが台湾の話に盛り上がっている間、
私はずっと、もやもやした気持ちでいました。
そりゃそうだよ、私は行ったことあるんだから。
みんなが想像で話している(間違った情報も含め)こと、
ほんとうはね。 私、知ってるの。
ほんとうはね。 私、行ったことあるの。
だけど、それが言えない。
言う勇気がない。
弱いなぁ、私。
屈折してるわね、私。
おなじみの感情だけど、トイレで小さなため息をつきました。
だけど、ほんとうはね。
あたし、ウソなんか、つきたくないんだよ。
ほんとうはね。